寺に住むカレー妖怪のブログ

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ネパール・ルンビニ旅⑨

前回のあらすじ:ルンビニからカトマンズに帰ってへとへと夕飯タイム。

モモの名店で名物に舌鼓を打ち、ネパール最後の夜はこれからだ!というところで感じる胃袋エマージェンシー。

currymandara.hatenablog.com

 

ぐるぐるぐると体内がどよめき、胃から何かがこみあげてくる感覚は人生の中で何度か覚えがあった。他の方もそうなのかもしれないが、この状態になってから胃にものをいれると、24時間以内を目安に私はたいてい吐く。(きれいな話でなくてすみません)

こうなったからには胃をやすめ、身体をやすめ、大人しくしておくが吉、というかそれしかないのだ。

それはわかっている、頭ではわかっている。だがしかし、ネパール最後の夜なのだ。次にいつ来られるかわからない異国の地で、未来(の胃袋)に不安はあれど少なくとも今は空腹すら感じている状態で、むざむざとホテルに戻っておねんねしろというのは、ちょっと以上に悔しいではないか。(これを煩悩と言います)

 

一方で経験上、胃袋が中々危険信号なのはわかっているので、食べるか休むかの舵取りをいまいち定められないまま、夜のカトマンズを闊歩していた。

とりあえず、ネパールにものすごく詳しい知人が教えてくれたお店を探そうと思った。ネパールにはバッティと呼ばれる形態の飲食店がある。端的に言うとこじんまりとした居酒屋だ。ネパールの種々のお酒とショーケースにはお酒にあうつまみ系のネパール料理が並ぶという。観光と言うよりは地元の人向けだが、日本では中々食べられないネパール料理が並ぶというのでぜひ行ってみたかった(お酒を頼まなくても大丈夫らしい)。

事前に教えてもらった住所をたずねようと向かうと、どんどん街灯の灯と外国人の数は少なくなっていく。道は狭く、小さな灯の下、何の気なしに地元の人が集まって談笑している。(だべっている、という表現が適当なのかもしれない。)

目当てのお店は、近くまで来ているはずなのになかなか見つからない。地元の人に聞きながら行ったり来たりしてようやく見つけたのは、看板も見当たらず入り口は狭く、ささやかな灯がともる、完全現地仕様の飲み屋であった。

おそるおそる店内に入ると、何人かの現地兄ちゃんがたむろっている。聞いていた通り店頭にはショーケース、そして数々のネパールおつまみ。

元気だったらこの陳列メニューをぜひとも試してみたく、酒が飲めなかろうが、見慣れぬ外国人客としてじろっと見られようが、臆さず居座ったと思う。しかしおつまみメニューの殆どが明らかにお肉と油のメニューであって、これを食べたら確実に私の胃は沈没してしまうだろう。

何とか食べられるメニューもあるのかもしれないが、ある程度ネパール料理に馴染みがあると思っていたはずの自分にも未知のビジュアルばかりであり、自分で適切なものを選択するのは難しそうだ。だからといって、このような形態のお店に「今胃の調子が悪いのだけど、それでも食べられそうなものある?」と聞くのは無礼であろう。「なにしにきたんだ」と私でも思うだろう。

結局、席にもつかないまま、店員さんに謝ってすぐに外に出た(結局なにしにきたんだと思われただろう)。

 

とりあえずとぼとぼと、ホテルに向かって歩きはじめた。最悪(と言っては何だが)どこかでスープでも飲めれば心身ともに満足するかもなあと思いながら。これを人は往生際が悪いと言うのだ。

そのうちふと、「バラかチャタマリなら胃の負担も少ないのではないか」という考えが浮かんだ。バラとは豆粉を使ったネパール版のお好み焼き。チャタマリは米粉を使ったネパール版のクレープのようなものである。両方とも日本のネパール料理屋さんで食べたことがあったが、現地ではなにか違いがあるのか気になっていたところだし、何より刺激的なスパイスは使われず、油もさほど多くない。

道の途中で丁度両方が揃っていそうなお店を見つけたので、もうここにする!と入ってみた。思えば日本でもネパールでも人づてのお店に入ることが多かったから、(ルンビニでの昼食もそうだったけれど)前情報なしの飲食店に入るのは久しぶりだなあと、どきどきを感じた。

壊れ気味のスマホで撮った店頭看板 多民族国家ネパールの、ネワール族の料理を出すお店

 

入口の小ささとは裏腹に、中に入ると二階建ての広い空間とちょっとこじゃれた木基調の装丁と若い店員兄ちゃんたち。比較的新しいお店なのだろうか?

入った瞬間少しびっくりされたがすぐに笑顔で席に案内してくれた。客は私一人のようだ。メニューを開くとおいしそうな、時には見たこと食べたことのないネワール料理の数々…このコンディションでなければ…。

 

初志を貫徹し、バラかチャタマリで悩む。(貫徹という言葉と矛盾していないか)

決めきれないので店員さんにどちらがおすすめかと聞くと即答でチャタマリ(ネパール版ピザともクレープとも)と返ってきた。なぜだろう、私はバラの方にひかれていたのだがと思いつつ(だったら聞かずにバラを頼めばよかったのでは)、ではチャタマリを、と頼んだ。最初はシンプルなプレーンを頼もうとしたのだが、きのこトッピングがあるよと勧められ、反射神経でそれを頼んでしまった。私はきのこが好きなのだ、が、まあ食物繊維豊富なので逆に消化に負担はかかるね!

そして待つこと10分ほどだろうか、出てきたのがこちらである。

 

クレープ上に巻かれているタイプは初めて見た。

パカッと開くと、きのこやチーズの具材とご対面。

日本で食べたときにはピザのような見た目だったのだが、どちらかというとクレープの形態で出された。フォークで開いて、ピザ状にしてみると、きのこや野菜、チーズなどの具材が。

見た目として胃が安心できる感じでほっと一安心、ぱくっと一口。

む~!あっさり素朴でおいしい!記事は薄いが固めで、ピザともクレープとも違う。近い食感はガレットだろうか。

ほんのり塩気のある薄味に、ほんのりチーズの甘さとやさしいきのこ(おそらくマイタケ)。粉になっても感じるお米の包容力に、なぜだか海苔が欲しくなった。

日本で食べたチャタマリは、もっと生地がクレープのように柔らかくて、トッピングも派手(映え?)だった気がする。今のコンディションだと、この素朴さがうれしい。

 

ちなみに翌日も別のお店でチャタマリを頼んだのだが(こちらもバラとチャタマリどちらがおすすめかと聞くとチャタマリ即答であった)、スパニッシュオムレツのような分厚いほわっとした生地で、じゃがいもや豆なども練りこまれており、食べ応えがあった(味としても形態としてもバラ寄りだったのでは。ちなみにチキンチャタマリを頼んだのにチキンが不在であった。逃げちゃったのかな?)

次の日のお店のチャタマリ。分厚い。ソースはちょっぴりスパイシー。

同じ「現地」でも、やっぱりお店によって違いがあり、おもしろい。

 

不調の胃コンディションだったがあっという間に平らげてしまった。もっといろいろ楽しめればという気持ちも確かにあったが、このお店に出会えて、このチャタマリを食べられたのはこの状況あってこそ。そのつながりというか出会いというものに感謝して、とても優しい対応をしてくれた店員さんに「ミトチャ!(美味しかった!)」と伝え、ホテルへと帰った。

お店の名前は「Pulu Kisi」。現地での評判とかツーリスト間の知名度とかはわからないが、それにかかわらず私の中で心に残ったお店である。カトマンズに行かれる人はよかったら立ち寄ってみてください。私もまた再訪したく思います。

 

ホテルに戻り、悩んだ末、胃薬を既定の三倍飲んで寝たら、翌朝、あの逆流感はすっかり消えていた。(とはいえ無理はしなかったが)

良い子は、マネしないでね。用法用量守りましょうね。

 

そんなこんなのルンビニ旅の一日でした。チャタマリは新大久保などのネパール料理屋さんで食べられるからお試しあれ。とはいえあんな素朴でちょっと硬めのチャタマリがどこでたべられるはわかりませんが…。(クレープっぽいのもおいしいよ)

予定通りいかない思わぬ出会いの積み重ねが旅と人生の財産です。

次、最後一回、ネパール旅の総括を書いて終わりにしようと思います。