【前記事のあらすじ】
https://currymandara.hatenablog.com/entry/2019/11/22/195330
・日本で一番多いインド料理店名を知りたくなった。
・とりあえず東京都を調べることにした。
・調査対象はNTT iタウンページ(インターネット版)のキーワード検索「インド料理
店」で出てくるお店
・単純に店名そのままを調べると傾向を読みこぼす気配がしたので、
①店名に使われている単語
②単語の意味
を調べることにした。
・カタカナ表記等の細部が異なる語も、同語を示していると判断できるものについては
集計に含めた。
ということで以下調査結果です。
まずこれを調査した2019年1月某日時点で、対象となる東京都内のお店は662件だった。東京都の面積は2,188㎢なので、単純計算だと3.3キロ四方内に一件はインド料理店があることになる。実際は都心部に集中しているわけだけれど。
その中でまず、①店名に使われている単語 上位5語を発表してみる。
【5位(同率)】
ガネーシャ、エベレスト
ガネーシャは日本人でも見たことがある人は多いのではないだろうか。
頭が象のヒンドゥー教の神様である。
引用:https://www.tirakita.com/id_pst/id_pstb_137.shtml
金運・商売・知恵学問などを司る神様で非常に人気がある。
商売の神様ということで飲食店の名前に掲げるのは自然のように思う。
日本だと居酒屋やら和食屋にえびすってつける感じだろうか。
一方、同率4位の「エベレスト」。ヒマラヤ山脈に属する世界最高峰だが、
ここで「ん?」と気づいた人もいるのではなかろうか。
エベレストはネパールと中国の国境に位置する。
そう、エベレストにアイデンティティを感じているのはネパール人である。
インド料理店を名乗るお店を実はネパール人が経営してたりする(いわゆるインネパ店)という話はちょっとずつ知られてきたが、そのお店の見分け方の1つが、
「店内にエベレストの写真や絵があったらインネパ店」と言われていたりもする。
この結果は、日本(東京)にどれだけインネパ店が多いかを示すこととなったのではないだろうか。ちなみに自分はインネパ店も大好きです。
一方でこの結果は、インド料理店を掲げているとはいえ自身のアイデンティティも主張したいというネパール人の愛国心も垣間見られたのではないだろうか。
【4位】マサラ
【3位】スパイス
マサラはインドなどで用いられる用語で、様々な香辛料を粉状にして混ぜ合わせた物を指す。つまり早い話がミックススパイスであり、3位4位はインド料理をわかりやすく表す用語が多く採用されているということを示しているのではないだろうか。
そして2位は考えどころの結果に。
【2位】インド・インディア・印度
この語はランキングに入れるかとても迷った。理由は以下である。
①「インディア」「インド」「印度」は同じもの(国)を指していると考えられるので、調査のルールに則ると同一語で集計することになるが、例えば「インドダイニング●●」みたいな場合、店名というより「割烹〇〇」「イタリアンレストラン◎◎」のような、料理ジャンルを示す店名の修飾語的なポジションと考えられる。これを集計に含めてよいのだろうか…?みたいな、葛藤する用いられ方をしていることが多々あったのである。とりあえず料理ジャンルを示すにすぎない使われ方の店名は集計外としたものの、客観的判断ができているか自信が無かった。
②そりゃインド料理店だって言ってるんだから、店名に「インド」を示す語が出てくるのは当然で、チートポジションに当たる用語だから省くべきではという思いがあった。
しかし、極力客観的に判断してもなおこれらの用語は多く使われていたし、逆に店名に国名が積極的に使われているのも珍しいのでは?たとえばイタリアンレストランで「イタリー〇〇」「イタリア〇〇」、中華料理屋で「中国●●」「●●チャイナ」と名乗るお店が多いわけでもあるまい。と思い直し、調査当時では集計外としたこれらの用語もランキングに含めることとした。
なにか学問的に詰めが甘い気がして情けない気持ちもあるのだが…ご勘弁ください。
そして栄えある第一位は。
【1位】ナマステ
インドやネパールで用いられる挨拶「ナマステ」が最多票であった。
自分は恥ずかしながらこの調査をするまで知らなかったのだが、
ナマステはインドだけでなくネパールの挨拶でもある。
前述の通り、ネパール人がインド料理店を経営するという複雑な形態が多い実状の中、
「ナマステ」は「インド」をイメージしやすい用語であり、同時にネパール人のアイデンティティも確保する用語であると考えられる。
したがって、インド料理店のややこしい構造をうまく包み込んでくれる用語として、多用されているのではないだろうか(あくまで私見です)。
そう考えると、日本におけるインド料理店をめぐる状況の一端を垣間見るランキング結果になったのではないかなあと、勝手に感慨深くなってしまった。
調査結果報告はもう少し続きます。