好き嫌いはほとんどなく、ましてやカレーと名がつくものであれば喜んで何だって頂く自分だが、このご当地レトルトカレーには苦戦を強いられてしまった。
それがこの宮城三陸ホヤカレーである。
宮城出身の近所のマダムから存在を聞き、「買ってきましょうか?」とのお言葉に甘えて帰省時に入手していただいた、ありがたい品である。
当のマダムも召し上がったらしく、曰く「ホヤの感じがちょっと物足りなかったわねえ」とのこと。
それは自分にとっては朗報であった。というのも、以前ホヤそのものを初めて食べたとき、一口、二口めは良いとして、あとから加算されていくホヤ独特の「甘味→苦み・えぐみ」のギャップが、食べられなくはないがちょっと自分にとってはきつかった記憶があったからである。
ホヤのクセがもう少し薄かったらむしろ好きかもしれないなあと思っていたところだったので、おあつらえ向きのカレー、と思った。最初は。
マダムからの海の幸の贈り物。海のない埼玉県民はひれ伏して食べるしかないのです。
いざ、いただきます。
パクッ……………??…!!!!…~~~~~!!…………ゴクン。
……ホヤ感万歳やんけ!!!!
自分は「ホヤ感」というものを、最初にホタテのような、また果実っぽくもあるような甘味を感じ、だんだん磯の苦み・えぐみが口に訪れてくる、そのギャップだと思っている。まずこの甘味の部分が、りんごやにんじんによって足されている。かつ、後から磯の感じがしっかりと、しかも唐突に追いかけてくる。イニシャルDもびっくりの急カーブで、甘味から苦み・えぐみへの段階的なグラデーションが薄いのである。
たとえるなら、果樹園を歩いていたら急に足元にワカメ落ちてた。みたいな、そんな唐突な場面展開を味わった。
断りを入れておくが、これはカレーが悪いのではなく、ホヤのギャップの楽しみ方をいまいちつかみきれていない自分に責任がある。
現に若かりし頃から日々ホヤに慣れ親しんだマダムにとっては、自分が衝撃を受けたギャップを前に「物足りない」と感じたのである。
やはり海のない埼玉県民、過去に一度だけホヤを食べただけの身にとっては、レベルがまだ追い付いていない代物だったのだ。
悔しい。経験値を積んで、いつかおいしくホヤカレーを食べられる海なし県民になってみせるんだから!と誓った自分の前に、早々に問題が浮上した。
マダムからホヤカレーをもう1箱いただいていたのである。
賞味期限が迫っていた。
続く