↓前回の通り、修行僧は日中のほとんどをご祈祷に注いでいたというお話の続き。
ご祈祷の申込時間は朝9:30-15:00。
30分間隔でご祈祷の枠があり、ご来山されたお客様が自由に申込みを行うことができる。
ご祈祷において読まれるお経は、短いとなえごとを含めると7つほどだが、修行僧はこれらを覚えないことには始まらない。
100日の禁足期間中は、お経本を持ってとなえることが許されていたが(むしろ義務だった)、休憩時間中にはひたすらお経の練習をして、早く頭と体にお経を染み込ませることもまた義務であった。
練習をして良い場所は決まっていた。
まずご祈祷を行うお堂内は駄目。一般のお客さんもいるので迷惑とのこと。
修行僧の控室も駄目。上のお坊さんや先輩が休憩する場所なので下っ端は用事がなければ入らないようにとのこと。
ということで、練習して良いのはお堂の周りの欄干か廊下ということであった。
しかし、廊下での練習はなんとなく憚られた。控室と直結していて壁も薄いので声を出せば先輩方に聞かれるし、なんだかんだ廊下のソファで休憩している先輩もいる。(禁足期間中はソファに座ることは許されなかった)
結局欄干に落ち着くのだが、ここもここで練習中にご祈祷が入った場合にわかりづらく、耳をそばだてている必要があり、それでも先輩が急いでご祈祷を知らせに来ることが多々あったので練習に没入しきることもかなわなかった。(単に集中力がなかったのかもしれないが)
ちなみにとなえるお経は、般若心経のように、ぱっと読んでもなんとなく意味が日本語に通じているお経と、インドの昔の言葉をそのまま音訳してあるため読んでもまったく意味の分からないお経とがある。
後者を覚えるのがとくに大変なんですね…。
さて、ご祈祷は入るときは入るが、入らない時には数枠分も空くことがある。
その場合も暇だとか言える身分ではない。
先輩方の談笑の声が聞こえたり、ソファでうたた寝している姿とかを見たところで、自分らが同じことをすることはできない。
飲物を飲んでよいとは言われておらず、座ってよいとも言われていないため、欄干でお経をとなえてはひといきつき、、また叫ぶように唱えたりお経本を閉じて暗唱を試みたり、寒さを紛らわせるために同期とおしくらまんじゅうをしながら時間を過ごしていった結果、既に述べたとおり、足がパンパンにむくんだ。
体育会系の部活だろうと仕事だろうと家事だろうと、そしてたとえ修行中であろうと、どんな時でも水分補給は大切ということを痛感したのであった。
そして10月からはじまった安居生活、季節は徐々に冬に向かっていく。続く。